プロローグ

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「君はもうすぐ生命としての最後を迎える」 告げられる死の宣告、女性のその声に感情はなかった。 ただ真実だけを再確認させる一言に情はなく、目の前で背を向ける青年を見つめる。 そして彼もまた、幾つもの墓を前にして切なげな表情を浮かべるも平常に答える。 「これはそういう契約だ。僕は世界の救済を望み、それを叶える為に世界と契約して力を得た。目標が叶ったのなら本望だよ」 「……確かに世界は救われた。しかし救済の英雄である君が救った筈の世界の行末を見届ける事を許されないのは少し非情すぎる」 「そうかな?この世界(ほし)を救うんだ。僕みたいな人間の命一つで救われるんだ、それこそ釣り合わないのは本来なら僕の方だよ」 青年はそう口にしながら右手に持つ黄金の剣を地に刺した。 それは女性が最後となる青年の……否、救世王の生涯を目に焼き付ける。 茜色に染まり世界を照らす夕日が黄金の剣に輝きを与え、女性にようやく救世王は微笑を見せる。 幾多の戦場で傷つきながらもその身体一つで誰よりも前へ駆ける英雄は決して悔やむ顔を見せなかった。 女性は彼の生き様をつい思い返してしまった。 彼は絶滅に瀕した世界を救う為だけに剣を握り、己がどれだけ危険な目に合おうとも逃げる事を選ばなかった。 誰よりも強く、誰より優しく、誰よりも仲間想いで誰よりも周りから愛されていた。 気味悪がられていた魔術師の女性に対しても分け隔て無く接して壁を無くしたのも彼のお陰であった。 まだ若く未熟な青年でも女性は王に相応しいと見定めていた。 だからこそ誰よりも彼の死を受け入れたくはない、彼が王としてこの世界の未来をどう作り上げるかを見届けたかった。 感情を見せないだけであって誰よりもこの結果を否定していた、世界との契約を破棄するべきと提案しようとも考えていた。 しかしそれは彼を否定する事と同意……女性は想いを押し殺して今という運命の時を迎える。
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