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お嬢様が虚ろげな表情で外を見ている。
とても綺麗で麗しく、僕は見とれてしまう。
「ねぇ、一彦」
「お嬢様。お呼びでしょうか?」
「あそこにいる男性、絶対受けよね」
本で指し示す先には雪の道を急ぐ男性の姿。
雪に足をとられ、もつれて転ぶ姿が可愛らしい。
まるで白兎。
「はい?」
「あなた攻めだし、相手にぴったりだと思うわ」
「あの、お嬢様?」
「そうね・・・。転んだ彼にあなたは手を差し出すの。大丈夫ですか?って。そしたら彼は顔を赤らめて言うの。
大丈夫です。でもこの着物一張羅なのに・・・。
あなたは言うの。
私のお嬢様のお屋敷、ここなので是非乾かしていってくださいって。
そして二人は・・・」
ぽっとお嬢様が顔を赤らめる。
「お嬢様。退屈なんですね」
「えぇ。退屈よ。早く雪、止まないかしら」
お嬢様と僕はその男性の背中を見送り、雪が止むのを待った。
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