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ピピピ… ピピピ…
聞き慣れた音で目を覚ます
おぼつかない手つきで毎日お世話になっている目覚
まし時計様をいつものように止めて重い身体を起こす
充電していたスマートフォンを手に取り時間と日付けを確認する。これも日課だ
スマホを片手に部屋を出て台所に向かう。台所に近づけば近づくほど朝ご飯の香りが鼻をくすぐる
そこには珍しい姿があった。
「おはよ…」
薄いピンク色のエプロンをした俺よりも小さい後ろ姿…妹だ
「おはよ、お兄ちゃん」
我が妹は俺の姿を見ず挨拶した。先生に人の目を見て話すようにって教えられなかったのか
「母さんは?」
先ほどから気になっていた事を聞いた。あまり大した問題では無いが、ふと聞いてしまう
「パートが早番らしいよ」
あぁ、 と納得する。一応親父も働いてるが母はパートをしている。まあ、普通の事だろう。
「お前が作ったのか」
机の上にはご飯、味噌汁、鮭の塩焼き、ほうれん草のおひたし、海苔とごく一般的な朝食が並んでいる
「なに?何か文句あるの?」
「別に」
ただ珍しかっただけだ。他意はない
「か、勘違いしないでよねっ!あんたの為に作ったんじゃないから!」
「はいはい、ツンデレ乙」
知ってた
我が妹は絶賛青春中である。俺と同じクラスの男子が好きらしい。
そいつに弁当を作る為、今練習中のようだ。俺はその実験台
我が妹ながらこいつはよくモテる。多いときは1日に5回以上告白されるらしい(妹談)
そんな妹が初めて好きになった人が俺と同じクラスにいる。だから俺も巻き込まれた。めんどくせぇ
いつも朝食の時は何も話さない。妹とは仲よくなければ仲が悪いと言う訳でもない。
せっせと朝食を食べ終えた妹は既に準備していた学校指定のカバンを持ち、急ぐように玄関に向かった。食後の食器の片付けは俺担当なのだ
「どうだった」
もう行ったかと思った妹が話しかけてきた。きっと朝食の味の事だろう。
何も言わずただ親指をグッとあげた。もちろんいい意味でだ
妹はそれを見ると行ってしまった。寂しい奴だ、せめてリアクションしろと心の中でダメ出ししながら妹の食器を片付ける、これが俺の日常なのだ。
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