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現実逃避をしていると「ウォォォォォン」と狼が遠吠えしたことで現実 に引き戻された
狼に意識を向けると既に飛び掛るために姿勢を低くしていた
あまりの気迫に思わず一歩後ずさる
手足が動くことに気付く
徐々に後退しつつ説得を試みる
「こんなオッサン食べてもうまくないぞ?そうだ!俺を見逃してくれたら旨い肉を買ってきてプレゼントしよう!これでも貯金なら結構あるんだ。嘘じゃないぞ?家庭もなく彼女もいないと金の使い道は限られてくるからな。この年になるまで俺は仕事一筋でやってきたからな?事務所には女っ気がなく、いるのは事務処理パートのオバチャンの木村さんだけだからな?あとはむさくるしい野郎どもの集団でオッサンばっかだ!新人の女の子を入れるぐらいなら私が働きますから給料上げてくれとか、木村さんが言いやがるから若い子を入れる気配すらないときた。よって俺には出会いなんて全然ない!これでも信じないか?そうだ。君との出会いは貴重な経験として心に刻んでおこう!でもな、俺はこんな出会いは望んでない。出会うならやっぱり美女がいいと思うのは男として当然だろう?よって君には興味ないからサッサと消えてくれ」
狼が飛び上がり向かってくると同時に横へと全力で横っ飛びをする
「へ?」
間抜けな声と一瞬で変わる景色
元のいた方向を向けば50メートルは離れている場所で狼は俺を探している
「火事場の馬鹿力ってヤツか?」
嬉しい誤算に喜ぶ間もなく狼は見失った俺に気付きコチラに駆け出してきた
「まだ喰われてたまるかよぉぉっ!童貞のまま死ねるかよぉっ!」
狼に背を向け全力で背を向ける
乾いた土に減り込む素足
減り込んだ素足に力を込める
一歩踏み出すだけで新幹線に乗った時のように流れる景色
全身を打つ突風のような向かい風
理解が追いつかない
が、ただ言えることは九死に一生を得たということ
そして爽やかとは言い難いが身体を打つ風が生きているということを自覚させてくれる
「ははっ、全裸も悪くないな」
思わず笑みが溢れた
…あっ、服が
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