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小さい頃のお約束。
「10年後、ここで待つ」
ヒマワリ畑で約束しました。
遠くへ行かれてしまった友達と。
10年が経った。
向日葵は立派に育ちました。
太陽みたいに燦々照り照り。
だけど、ちっとも楽しくなさそう。
俯いた向日葵のお顔に影が差す。
まるで何かを隠しているみたい。
1年が経った。
今年も向日葵まっきっき。
でも、やっぱりしょぼんとしてる。
いっぱいのヒマワリの種で、
お顔をみっちり隠してる。
3年が経った。
なんだか慣れたみたい。
太陽みたいに燦々照り照り。
しゃんと立って、
寂しさなんてなんのその。
今日もいっぱいの陽射しに浸かって、
眩しくお顔を照らしてる
3年と2日が経つと、そのとき。
雨が降りだした。
曇天の大空から降る洪水。
しゃんと伸びてた背筋が、
しわしわと傾いてゆきます。
「もう、会えないかしら」
あきらめた頃、道化方みたいに
雲の間隙をこじ開けてきた。
光芒。
びしょ濡れな体を
手拭いでくるむ母の手のように
向日葵は優しく抱かれました。
あの子はしれっと言いました。
「忘れん棒してました」
怒って顔をあげたら、
目を刺すような夏陽射し。
13年と2日も前に見た、あの眩しさ。
変わらない無垢な笑顔に、
頭が俯いて、
それでも飽きたらず、
たくさんの種でお顔を隠しました。
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