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「運命…」
「ではさしずめあの球体が我々の全て(人の運命)ということですか」
繭とも地球儀とも、魔方陣のようなものだとも言えるような不思議な球体からは絶え間なく糸が紡ぎ出されていく。
それはあるときは長く、またあるときは短く切り揃えられて、はらはらと散り積もって泉のように広がっていく。
私が最初泉だと思っていたものは大量に切り取られた糸の塊で、試しにすくってみても手の中から零れるようにぱらぱらと泉へ戻っていく。
「これは汲めねぇな」
正親さんが私と同じように糸を持ち上げてみて同じように手から零れ落ちていくのを見ながら考えるようにしていると、鳴っていた不思議な音が鳴り止む。
顔をあげれば私達を囲むように立つ3人の女性。運命の籠の中に閉じ込められてしまったかのように、見えない何かに圧迫感を感じて息を呑むと、同じような顔立ちをしていながら、何の表情を浮かべていない綺麗な顔の口の部分だけがゆっくりと開く。
『運命は汲み取れぬもの』
『運命とは望む道筋を決められぬもの』
『しかし、死だけは己の運命で唯一、定められる』
はさみを持っていた女性がすっとはさみを目の前に差し出してくる。
意味がわからずそのはさみをじっと見つめていると、いつの間にか女性の手の中には赤いリンゴのような果物が収まっている。
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