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泉のたもとに実る果実に捧げ、器を満たせ
唯一クエストの名前とともに記されていたミッション内容。
そこには一部分が意図的に隠されていたわけだが、最初に着いた場所で泉がなかった時点で、ある程度泉から水を汲むことが目的ではない可能性を考えればよかったのかもしれない。
決定的になった最後の場所は奇しくも“死者の国”『ニヴルヘイム』。
何もないと思っていた物語のヒントは、全ての答えが出揃った今ならば、全てに意味があったことを認識させて現実を叩きつけるのにはおあつらえ向きだと言えよう。
「知ってる?賢者の石って赤い色かもしれないって言われていることが多いんだけどさ。『リンゴのような赤いもの』って言ってるヤツもいるんだって」
賢者の石、それは万物の根源とも言われ、中世ヨーロッパでは一時期盛んに研究がされていた。これが出来れば創造主が造ったとされる『アニマ・ムンディ』と同じものが人も創造可能と見なされ、人が神に近づけると考えられていた。
「それは…とんだ皮肉だな」
辛うじてそれだけ返せば、涙の痕がまだ少し残る顔で、同じように少し斜に構えたような笑顔が返される。
「1つは俺が食う。後1つはお前らで相談しろ」
別の方向から声が聞こえたかと思うと、場に出された2つを素早い動きで私達の手から盗ると、事もなげに言い放つ。
「…ふざけんなっ」
「ふざけてなんかない」
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