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- viewpoint change -
2つの影は1つの影を挟むようにしてそれぞれの果実を手にしている。
「……」
「決まったんだから文句言うなよ」
「……」
「同時だからな」
それにもう1人が静かにうなずくと、しずかに果物をかじる音が聞こえた。
変化は程なくして現れる。
1人が頭を抑えるようにしてうずくまると、一瞬苦しそうな顔を見せるも、苦痛も悲鳴もあげることなくゆっくりと体を地面に伏せる。
もう1人は体を抱きしめるようにして膝を折り、1人目と同じように苦しそうに眉間に皺を寄せたが、同じように苦痛を零すことなく体の力を抜く。
次に変化が現れたのは、最後まで膝を折ることなく立っていた1人が持っていたモノだった。
満たされることがなかったものは、日の光に照らされるように光ると、湧き出る泉のように底から真っ赤な液体が湧き出てくる。
それが蓋を開くことなく中身をなみなみと満たすと、いつの間にか倒れていた2つの影は消滅していた。
手元に戻されたのは、赤い液体で満たされた容器だったが、不思議とそれは赤い石のように怪しく光る。
そして最後に残されていたのは、少し離れたところで倒れている1つの影。
表情はどこまでも穏やかで、もしかしたら幸せな夢を見ているのかもしれない。そう考えると堪らなくなる。
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