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「………っ……」
ここで初めて残された影が、抑えがなくなったものを解き放つかのごとく声を上げる。
動物の泣き声もなく、聞こえるのは葉が擦れるだけの静かな空間に、魂の慟哭(どうこく)のような叫び声だけが響く。
倒れる間際の刹那の瞬間に見せた2人の表情は、痛みに我慢するものではなく、残されたものに希望を託すかのように、何度も見てきた表情を浮かべて見せた。
ある者は最後まで背伸びをすることを止めず、憎たらしい笑みを浮かべて
またある者は、出会った当初は考えもしない程穏やかな、優しい笑みを浮かべて
目をつぶっても刹那の表情が焼き付いた網膜から幾度となく再生され、涙を簡単に止めることを許さない。
どれ位そうしていたか認識出来なかった。
ただ、だんだんと辺りに夜明けを告げていく光に、肩で息をしながらも、胸の痛みを振り切るように大股で歩き出す。
そっと傍らに眠る少女の手首に触れ、表示されるパスの中から一部の情報を抜き出した。
せめても、犠牲になった者達が望むことをしてやりたい。
震える手でパスを操作すると、ややあってから機械的な音でプレイヤー2名のデータ消去を確認するアラームが鳴らされる。
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