第1章

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「クリスマスふぃーばー」 モミの木の群がる土手に彼らは集まった。有象無象の20人。表向きの文明が無くなっても 人は変わらず。 真昼間から慌ただしく動いている。 「ロト! そっちの飾り取って」 モミの木に登ったロベルタが下にいるロトに話しかける。木にはロープだけがぶら下がっていて ロベルタは器用に枝を飛び乗りながら飾りつけをしている。 同じようにカグラとアキツグも飾りつけをしていた。 「なぁ、ロベルタ。なんでクリスマスに飾りつけをしてるか知ってるかい」 「サンタさんがどうとかって昔みたよーな?」 「そうそう。元々は文明があった頃にサンタちゅーのを迎える為のものだったそうな」 なるほど。と話を聞きながらロベルタが作業をしていると、下からロトが「いくよー!」と 飾りを投げつける。しかし、宙を舞う飾りはロベルタが手に取る瞬間に落ちてしまう。 「ごめんごめん。ロト、もっかい投げて!」 そう言っている間にも、カグラは下に手を伸ばしたり上にジャンプすると、下を見ることもなく 飾りをキャッチしていた。 「うわ……どうやって持ってきたの?」 「ああん?これは下みてみりゃいいさぁ」 カグラにそう言われて下を見ると。無言で飾りを投げるアキツグの姿があった。 アキツグはカグラを見ているものの、カグラはアキツグを見ることなく、飾りを受け取る。 「兄妹ってすごい」 「いやぁ。アキツグの奴だからできるのさぁ」 自慢気に笑うカグラを見て、ロトも少し嬉しそうに笑う。  そのモミの木の遙か向こう側では。息をひそめる二人の影があった。 視線の矛先は鹿の群れに向いている。サタリが古びた銃を構えると、アレンは風向きを確認する。 そして、アレンが小石を投げて鹿たちの視線を別の場所に向けた時には、既に破裂音と共に鹿は倒れていた。 一発に対して通常は一匹を仕留めるところ、彼女は二匹を同時に仕留めていた。 逃げる鹿たちには眼もくれず、二人は率先して2匹の鹿の元に行くと、血抜きを始める。 「今夜の夕飯のメインは鹿だね、姉さん」 サタリは無言で頷くと、軽々と鹿の首を落とし血を抜いていく。凄惨な場面をアレンは微笑ましい物事を見るように していた。しかし、その気配は一瞬にして警戒に変る。 「誰ですか?」 アレンは片手に持ったナイフを握りなおすと、草陰に隠れた存在に目を向けた。そこからおずおずと出てきたのは 愛想笑いを浮かべたプロテアだった。
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