梅干しにビー玉

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昔 友達の母ちゃんが もし あたしが道でお金をひらっても 百万円までは届けない 百万円で死ぬ人間はいないから なんて 少し強引でそれでも 少年には少し刺激的に視野を広げるような事を言っていたんだ えっ? とも思う…だけど それが千円なら? それが百円なら? だんだん賛成派が増えて来た あるいは十円 それとも一円 善意は 何処までが善意か? 今は道徳の時間ではない… 個人のスタイルの話もしたくない 善意の程度の問題 そしてそれは同時に 悪意の程度の問題 僕にかったるくない善意を教えてくれないか 僕の心に染み入る善意… だって 生温い善意は悪意より生臭いから 教護院からひとつ年下の男の子が やって来た 驚いたのは その男の子は嘘をつくんだ もちろんその頃 僕も悪い子だったから たくさん嘘をついた でもそれは危機回避の為の嘘 叩かれるのが怖いからだった 彼は 兄弟いるの? 何月生まれ? お風呂入った? 何もプレッシャーのかからないところまで嘘をついた 彼がいた二カ月間 彼はすぐばれるような嘘をたくさんついた ばれたら 「もう、嘘はつかない」と言って 次の問にまた嘘をついた 僕は… たった九つの男の子がなんでこんなに嘘をつくのか? だんだん怖くなったんだ…
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