梅干しにビー玉

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赤ん坊や幼児を見て 憎たらしく思う者などいない 生まれて来た命は たぶん 柔らかい透明な梅みたいなもの その梅の実は 糠味噌に落ちるのか 溜まり醤油に落ちるのか 蜂蜜入りの梅樽に落ちるか それとも 焼酎に転がり落ちてしまうのかで その後の変態に大きく影響する ほらほら 彼の青い梅の実は 紫蘇の葉と塩に漬かり真っ赤な美味しい梅干しになるみたい… じっくりじっくり周りの環境に漬かり まるで元々の姿など憶えてないみたいにまるっきり違うものに仕上がる 出来上がったその実だけが 世の中の目に晒されて あるいは陽の目をみる 中には病原菌にまみれた樽に落ち込むものもいるわけだよね かわいそうに… 運が悪かった… ? そんなところか? でもね それはその梅の実の一部始終を見てた場合の感想なんだよ そして それこそが悲しいのよ 誰も その実の一部始終なんて知る由もなく その実は上手に説明できる訳もない ただ仕上がった形が皆の目に映る かくして 嘘つき少年の誕生と 相成る訳ですよ いやいや… ヘドロの中に落っこちたんだから ヘドロを吸うしかないんだよ 選択肢がない ただただ 腐っていくだけ… 本人が一番解っているんだ そんなこたぁ… だから そーんなことぜんぶっ‼ ひっくるめて 隣人を愛せよ と 聖人たちは言うわけ。で 俺は無理。だけどね ただ 例え嘘つき少年だとしても 自分で解っている所だけはさ 小さい小さい小さいガラス玉がさ どんな環境にも染まらずさ 煌々と美しい耀きを放っていると 信じてんさ 今は。
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