きつねはつまむ

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それは 僕らが子供の頃よりちょっと前の 話 お昼前 娘さんは自転車に乗って おじいちゃんにお弁当を届けに出掛けた おじいちゃんの好物の おいなりさんと太巻き 京都御所の中は 何時も通る道は 建物の周りは 自然豊かな森の中 いつもの近道 ぎんなんどんぐり黄葉に楓 娘さんはおじいちゃんの喜ぶ顔を想いながら… ペダルを踏む… いつもの道 だけど… ? あれ? おかしいなぁ… 何時も通る道なのに… よく知ってる風景なのに… 時計を見る あ 後五分で昼どきだ‼ 早く届けてあげなきゃ… 誰かに聞こうにも 誰もいない あ 雨だ 空は晴れているのに… 小雨が降って… あれ? ここはさっき通ったはずなのに… また、だ。 時計を見る 十三時三十分… あ~あ お昼ご飯間に合わなかった じいちゃんごめんなさい だけど 一体何時になったらじいちゃんの処にたどり着くの? もしかしたら… 神様神様助けてください。 何回も通りすぎた道端の小さな社 お稲荷さんだ 狐の神様 お稲荷さんお稲荷さん 助けてください ペダルを踏む… あ ようやく探していた出口が 見つかった ほっ。 お腹すいた… じいちゃん、ごめんね。 お弁当、分けてね。 お重を開く… あ おいなりさんが無い‼ いなり寿司だけが綺麗になくなっている あ お稲荷さんの好物はお揚げだった あ 狐の嫁入り… 娘さんは太巻きをひとつ ぱくりと頬ばった
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