市場に憩う

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ある晴れた昼下り 市場へ続く道 舗装されない砂利道を歩く タバコ屋のばあちゃんは居眠り 米屋のおじちゃんが声掛ける 「ジュース飲むか?」 「うん」 プラッシーを飲みながら 厚く垂れた雲を見上げる 太陽は透けて天使の階段 「さいなら、またね。」 「さいなら」 建て売り住宅同じ屋根青の屋根 建物の形は同じなのに中身は まるっきり違う 青の屋根 仕切られた空き地は雑草も枯れて 段ボール箱に捨てられた子猫 かーわーいーい子牛 売られてゆーくーよー 惣菜の匂いのするにぎやかな市場 痛い子供は痛みを忘れて 荷馬車は軽トラに変わり ごとごと野菜を乗せて行く 魚屋の前の樽でドジョウが足掻く タマゴ屋はむき出し卵を計り売り 豆腐屋の前で鍋を持った人が並ぶ 買い物篭から飛び出す葱や大根 冷めた子供は少し温まり 温まった自分を恥ずかしがる いつかこの景色も消えると… いいのに ドナドナドーナ ドーナー どんなに青空望んでも 曇った眼じゃ拝めない 日がな1日市場に座り 行き交う人並み眺めてる 見える景色は諦めて 見えぬ明日に目を凝らし 暗くなった停留所 子供は1人バスに乗る 哀しそうな瞳で見ているよ ドナドナドーナ ドーナー 子牛を乗せて ドナドナドーナ ドーナー 荷馬車が揺れる
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