金魚すくい

2/3
前へ
/372ページ
次へ
夕方六時は紫の時 夕焼けだいだい夜は紺 あいだに紫現れる 連なる提灯 連なる太鼓 村の鎮守の神様の お囃子誘う夜店の灯 早く来ないか待ち合わせ 夕闇流れる仁王様 石段腰掛け恋心 冷たい西風諌めても あなたを想い火照る頬は橙色 鳥居の下に現れた君に 高鳴る期待と込み上げる暖かさ 君の歩く石段は光るよう 早く見つけて欲しくて 何度も何度もジャンプした 「お待たせ」 「うん」 薄化粧いつもの君より特別な君 忙しなく握った君の手は 少し冷たく小さく柔らかく また込み上げる… 「可愛いね」 「ありがと」 君が現れた時から ここは特別な場所 どんどんひゃらら 幸せは何処からやって来る 君の家からやって来る 素敵な音を響かせて 君の匂いはいい匂い りんご飴みたいな べっこう飴みたいな 生まれた時から好きな匂い ぴーひゃらら 恋物語の演出は夕焼け屋台 綿菓子、投げ輪、飴細工。 君といれば… 焼きそば、射的、見世物小屋。 何処だって… 玉カステラ、ガマの油、水風船。 そこが幸せの在処 ひときわにぎやか金魚すくい はだか電球に照らされた子供たち 人懐こいおじさんが誘ってくれて 二人並んで金魚すくい 二人並んで金魚すくい 時間よ止まれ紫の時 時間よ止まれ紫のまま
/372ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加