隣の席に

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誰にでも 心に残っている人 いますよね 伊藤さんはガリガリ っていうほど痩せていてね 性格も大人しくて 外から見ると根暗に見えちゃう 美人じゃないし いじめられっ子かな もちろん 同じクラスでも たとえ 隣の席に座っていても 10才の僕の視界には 入って来なかったの ある時彼女は僕に話しかけてきた 何処に呼び出されたんだか ビー玉とメンコのたくさん入った ビスケットの缶をくれたの そう、あの話 彼女がね なんで特に仲の良くない 僕を選んだのかはわからない でもね 僕が喜んだら すごく素敵な笑顔を見せてね 僕の方はね 思いもしない方角からの 僕個人に向けられた優しさに 驚いてね。 だけどすごく喜んだ。 たぶん"好き"とかじゃなくて 彼女はただ純粋な善意を 僕にくれたんだ 東さんは屈託がなかった やっぱりあんまり 美人じゃない 優等生で成績よくて静かで 特に目立たない 赤縁の眼鏡かけて 規則通りのスカートに靴下 こちらはヤンキーだから 住む世界が違う感じ… たいてい "良い子"は僕に近づかない頃にさ 彼女の隣の席になってさ なんかすぐ打ち解けた だっていつもニコニコしながら 話しかけてくるし 話が面白いんだ 喋りだすと速いの 話す速度が 本当は おしゃべり好きなんだろうね 優等生の彼女が 僕の隣の席になってから 授業中によく怒られていた 「そこ!!うるさい!!」って ある時彼女はこう言ったの 「やまさきくんの隣になってから成績が落ちたからもうやまさきくんとは話さない」って 珍しく怒ってね 彼女の計画は 3日で破綻したけどね 僕の方はと言うと 彼女の優しさにいたく感動してね "ああ、愛情一杯に育てられたんだな"って こういう強さもあるんだなってさ 夏休みに直筆の絵はがきを8枚も 送ってあげた 誓ってラブレターではないよ 友情の証 MAXだね
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