イチローの話

5/5
前へ
/372ページ
次へ
「常ちゃんも山ちゃんも他のみんなも俺が捨て子やから馬鹿にしてるんや。常ちゃんはお母さんがいるし、山ちゃんもお父さんがいるし…両方おらん捨て子の俺の事を馬鹿にしてるんや~‼」 火がついたように泣き出した… …………………はぁ? 俺も常ちゃんもお互いの顔を見合せた こんなに長く一緒に暮らして来たのに… 施設の子供が施設の子供を馬鹿にする それも自分ではどうにもならない生い立ちの事で… あり得ない 押し問答にかけた時間の長さが、イチローの思いの深さを物語る 片親が捨て子を馬鹿にする… 「お前…ずっとそんな事思ってたん?」 イチローが頷く イチローはなんでそんな事を思ったんだろう 「よう頑張って教えてくれたなぁ!!」 常ちゃんが笑う イチローが頷く 「無い無い。そんな事絶対無い。みんな一緒やみんな一緒。」 「お前…やっぱりポイントずれてるなぁ…そやから漢字テスト満点やのに、本チャンのテストは点取れないんや。やっぱアホやなぁ!!」 イチローは笑った たぶんイチローの半分は本当に深い悩みだったんだと思う でも後の半分は確かめたかったんじゃないかなぁ 本当に気を許せる仲間かどうかを… ただね驚いた… 驚いた… まさか自分が差別する側に見られるなんて… 本人の思い込みほど周りは何も思ってないのか? 人間て…難しい。 あなたは何を感じましたか?
/372ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加