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「…ふうん。そんなことがあったんだ…。」
坂口は余計なことまで話してしまったことを後悔した。
妻はさっぱりとした性格だが、意外と話したことを覚えていて、後々冷やかしたりしてくることを一瞬忘れていた。
冷やかしといってもじゃれあい程度のもので、夫婦生活に支障をきたすものではないが。
「ねえ、それで?その後戻ってきてからどうなったの?」
「あ?ああ、うん。えーっと…」
夜風は涼しいが、坂口の額に汗が滲んできた。
坂口の妻は缶ビール片手に、夫の動揺する姿をにやにやしながら見ていた。
「確か、就職活動か何かでサークルに来られなくなった気がしたな。そんなこと知らないからこっちはがっかりしたよ。」
今日は満月の夜だったが、月明かりを隠すように周りの木々がセピア色に見えた。
坂口の妻は夫の話す横顔をじっと見つめていた。
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