Teenage Dream

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「あなたって、学生の頃からよく泣いてたんだ!あははっ!おっかしい~!」  坂口の妻は2本目のビールを開けていた。少し酔っているようだ。  坂口は下戸なので、酔って楽しくなれる妻を羨ましいと思っていた。 「ママ、酔ってるよ。もう寝よう。お話はここまで。」 「やだー!もっと聞かせてよ!こんなチャンスめったにないんだから!」  確かに坂口は仕事に忙殺され、いわゆる家族サービスはここ数年していなかった。  やれやれといった雰囲気で坂口は続きを話し始めた。 「でも、もうほとんど終わりだよ。この話。あとは特にないもの。」 「えー、つまんないー!何かもっと劇的なことなかったの?」  そんなドラマや人生ゲームみたいな劇的なことなど普通はない。そう思いながらも坂口は何があったかを必死に思い出していた。 「ああ、そうそう。オチはないけど、ちゃんと終わりがあったよ。」  坂口の妻はわくわくした表情になり、夫の顔を間近で覗き込んだ。  距離の近さと酒臭さで、坂口は思わずのけぞってしまった。 「ママ…、近い…。あ、それで結局、その人は就活が終わってサークルも卒業。で、送別会があって、その時に…。」
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