Teenage Dream

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 送別会はチェーンの安い居酒屋で行われた。  私も成人し、参加ができた。何より彼女に会って話が出来る最後のチャンスだと思っていた。  乾杯を済ませ、司会役が卒業生を紹介し、それぞれの思い出と別れの言葉や後輩に対してのアドバイスなどを話していた。  いよいよ彼女の番だ。私は少し姿勢を正して彼女の話を聞く態勢を取った。 「南ユキです!マネージャーでした!」  周りから「知ってまーす!」や「お疲れさまでーす!」などの声が聞こえてきた。  私はじっと黙って彼女を見つめていた。  彼女は参加者を見回しながら話しをしていた。一瞬私と目が合った気がしたが、すぐにそらされた気も同時にした。  胃が少しだけ痛くなった。  彼女は当たり障りのない思い出と感謝の意を話すと、そのまま順番を終えた。  私はがっかりした。何か自分のことを匂わせるくらいでも言ってくれるのかと思っていたからだ。  送別会は賑やかに進んでいる。私はちらちらと彼女を見ていたが、こちらの視線など気付かず、後輩たちと笑いながら話をしていた。  私はこんな重い気持ちになるならと、参加を後悔していた。  飲めないビールを無理やり飲もうとしていた時、誰かに肩を叩かれた。 「坂口くん、楽しんでる?」  相変わらずの笑顔で、いつもと同じ話し方で、彼女に1年半ぶりに話しかけられた。  涙をこらえ、喉が痛くなった。  私は頷くだけで精一杯だった。  彼女は私のコップにビールを少しだけ注ぎながら話した。 「サークル、頑張ってね。運動音痴でもちゃんとやってたもん。だから、ね。」 「…はい。ありがとう…ございます…。」  ビールを一気に飲み干した。頭がクラクラして倒れそうになったがなんとか踏みとどまった。  コップをテーブルに置き、私は彼女に向き直り、口を開いた。 「…南さん…。」 「ん?なあに?」  やはり彼女の笑顔は優しかった。 「1年の合宿のときの返事…まだ聞いてないんすけど…。」 「???」  彼女は不思議そうな顔をした。  私はあの時と同じことをもう一度言った。 「俺、南さんが好きです。ずっと好きでした。」  彼女は急にうつむいてしまったが、私は構わず続けた。 「今でもずっと好きで、でもなかなか会えないし、話せないし、ずっと苦しくて。」  彼女は突然立ち上がり、私の手を引いて外に連れ出した。  他の参加者で、二人の行動に気付く者は誰もいなかった。
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