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重い沈黙の時間が過ぎていく。たまに吹く風が周りの木々の葉を軽く揺らし、水面が波打つ。
「私ね」
彼女が静寂を破った。
「入学してすぐ、3つ上の部長だった人と付き合ってたんだ。でも」
少し間を開けて再び話し出した。
「私が2年になって、夏休みの前に別れちゃった。」
私は思わず彼女の横顔を見た。
暗くてよくはわからなかったが、その頬に雫がこぼれているように見えた。
「彼が就職してすぐ、地方勤務が決まってね。週末、サークルサボって会いに行ってたんだけど、誰かと腕組んで歩いてるの見ちゃったんだ。」
私はどう声をかければいいのかわからなかった。
「そう…ですか…。」
「たまたまその日だけ、いつもより1本早い電車で着いたんだ。で、いつも迎えに来てたから駅で待ってんだよね。そしたら…」
先の想像はついた。私は彼女に悲しい記憶を戻させまいと思い、話を遮り、思わず抱き寄せてしまった。
「いいっす!南さん、もういいっすよ…。」
彼女は拒みもせず、ぎゅっと私のシャツの袖を掴み、よほど我慢していたのか溢れる涙を止められなかった。
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