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私は彼女に思い切って告白することを決めた。
「南さん…。俺、その人の代わりになりたいです。」
「なに…言って…るのよ…。」
確かに私にも何を言っているのか理解出来ていなかった。
ただひとつ言えることは、何とか彼女の悲しみを消してあげたい。それだけだった。
「俺…南さんが好きです。なんて言うか、笑ってるとすげえ可愛いし、喋ってると安心できるし、勧誘のときに見てどストライクだと思って、それであとは…」
彼女はまだ涙を流していたが、気持ちはいくらか落ち着いたようだった。言葉に乱れがなかったからだ。
「坂口くん…。こんな時に言われても困るだけだよ。それにもう私もオバサンだよ?もっといい人いるよ?」
オバサンとは思いもしなかったが、確かに10代の目から見た20代は相当大人びて見えた。逆に言えば彼女から見た私はかなり子どもだったのだろう。
「いや、俺、南さんがいいんです。南さんがいくつであっても、南さんが好きなんです!」
私は夢中で彼女への恋心をぶつけた。彼女はうつむいたまま、黙ってそれを聞いていた。
「あ…すみません。なんか俺、ひとりでバカっぽいですね…。」
彼女は立ち上がり、服の汚れを払う仕草をした後、目を軽くこすった。つられて私も立ち上がった。
「ううん、バカなことないよ。ありがとね。変な話に付き合ってくれて。」
「あ、いえ。俺こそすみま…!?」
そう私が言いかけたとき、彼女が突然私に唇を重ねた。
「坂口くん、明日帰りの準備で早いから寝坊しないでね。おやすみ。」
そう言い残し、コテージへ走り去っていった。彼女はいつもの笑顔に戻っていた。
私はその言葉にも何も言えなかった。
たった1秒程の時間のはずだが、その時間は何分、何時間にも感じていた。
ふと我に返り、彼女の行動の意味を考えていた。
(俺の告白を受け入れてくれた?そうだよな。そうじゃなきゃしてくれないよな!うん!やった!やったー!)
両手を握り締め、体を震わせながらガッツポーズをした。
しかし、喜びはそう長くは続かなかった。
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