新月の悪夢

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女は、横たわる男を見下ろしていた。 『ため込んでいた割にあっけないものね』 男はもう血など通っていないだろう。 心臓が止まっているのだから、通う血などあるわけがない。 冷たい身体から奪った、久しぶりの熱に、女の身体は逆にほてっていたが。 『一回で放出しすぎたのね。もっと長く楽しめる逸材だと思っていたのに、残念だわ』 バレンタインを挟んだ新月の間にしか活動をしない女は、この間に一年のエネルギーを蓄えなければならない。 それが、女にとっての食事だから。 だけど、それだけではない。 女は純粋にあの行為そのものが好きなのだ。 ため込んでいて、楽しめそうな人材を常に捜しているのだ。 せっかく見つけた獲物が、長い間ため込んでいる人間だったから、きっとたくさん楽しめると思っていたのだが、当てが外れた。 始めてから、ほんの少しの時間で逝ってしまったことを残念に思う。 吸い取ったエネルギーはため込んでいただけに美味しくはあったけれど。
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