聖なる夜に

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「メリークリスマス」 2人の沈黙の中にその言葉が落とされたのは、日付が25日に切り替わった少し後だった。とは言っても、僕は意識的にそのタイミングで言ったわけではない。その時の僕には時間を確認する術はなかったし、本当に単なる気まぐれと言うかその時の気分的なもので、言いたくなったから言っただけの事だった。 目の前にいる彼女はそれに対して何も返さない。いや、返せないと言った方が正しいだろうか。僕が手の力を抜くと同時に彼女は呼吸を取り戻し、激しい呼吸を繰り返し始めた。 耳元で聞こえる息切れが、僕の気持ちを昂らせる。僕が息切れに聞き浸る中、彼女はその息切れの中に何度か咳を挟み少しずつ落ち着きを見せ始める。僕はその頃を狙って、もう一度手に力を加えた。 呼吸のタイミングが悪かったのか、はたまた彼女が何かを言おうと口を開いた時だったのかはわからないが、彼女の口から大きく息が漏れた。僕はそんなこと気にも留めずに少しずつ力を加えていく。
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