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訳が分かっていないミハルは「おい家治は……」と言いかけたが、人差し指を立てたコオリを見て黙ってついてゆく。
彼らがしゃがみながら移動したのは、王様から見つからないように……である。
「どこいくんだよ、コオリ!」
小声だがイラつきを含んだ口調でミハルが尋ねると、コオリは「お前は悪戯の天才だからな。不本意だろうけど隠れてこの意味不な状況を突破する術を閃いてくれ」とテーブルクロスを捲り、テーブルの下へとミハルを促す。
「バカヤロウ! お前何考えてんだよ! この状況で隠れてられっか!」
「この状況だからお前の閃きがいるんだよ! この万引き窃盗の常習犯め!」
コオリの放った『万引き窃盗の常習犯』というワードに、思わずミハルは黙った。コオリが求めていることをそのワードで察したからだ。
鋭く射抜くような眼差しで「本当にいいんだな」とミハルは言った。
「これしかないんだよ。早く隠れろ。今なら誰も見てないし、会場も暗いからわからない」
「……俺がなにも思いつかなかったら?」
「お前のせいでみんな死ぬ。がんばれ」
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