chapter.2 『ディスイズ ア ハンマー』

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 ステージ上の二人を見守る同窓生たちの耳には、彼女らの会話は届かない。だが、遠目で観るその様子にただならない空気が流れていることは、肌で感じていた。  わずかにハンマーを持ち上げるトウサが本当に具貫の左手を打つのか、そんなことが本当に起こってしまうのか、折中トウサというよく知る同窓生が、恩師である具貫の左手を傷つけるのか――。  コオリや同窓生たちは、よくない夢を見ているようだった。 時が止まってしまっているかのような錯覚は、頼りない音で唐突に終わった。 「ぐっ……!」  具貫の呻き声とすぐあとに「ご、ごめんグッチ!」と謝るトウサの声。  具貫は打たれた左手の甲をさすり、「よくやった、折中」と笑った。 「グッチ……」  トウサは、具貫の笑顔につられて笑う。 『なぁ~んか、シケシケの結果となりました! でも一発目はこんなもんでいいかなー、女の子だしねぇ~。でも一発は一発! 次のラウンド行ってみよ!』  トウサが振り下ろしたハンマーは、明らかに躊躇いを纏っていた。ゆえに具貫の左手を襲ったハンマーは、ごく弱い力だったのだ。
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