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「なにか……勝算あるのか」
昔と変わっていない……、むしろ強くなっているミハルにコオリはなにか賭けたい気持ちになった。もしも、どうにもならない地獄が待っていたとしても、この男とならばなんとかなるかもしれない……。
そんな、根拠のない希望を他人任せに乗せようとする。コオリの性格ゆえのものだといえた。
「いや、まだない」
「そうか」
普通ならば落胆してもいいような返事だったが、ミハルは「ない」ではなく、「まだない」と言った。つまり、コオリは次のように捉えたのだ。
――この状況を脱出する妙案を考えている。それも、希望的観測ではなく。この状況に置かれた材料で勝算があると無意識に知っているんだ。
と。
「うう……」
汗でぐっしょりと額を濡らし、痛みに顔と声を歪めるマツリ。彼女を介抱しているトウサとも目が合った。彼女もコオリと同じ思いだったらしく、目が合いひとつ頷く。
「だったら……時間稼ぐしかないってことか」
コオリは前傾姿勢でしゃがみ込むとミハルの手を引き、ついてくるように合図を送った
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