第1章 ~守りたい約束~

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僕には毎朝かかせない日課がある。 隣りに眠る弟を起こす。それが僕の日課。 先に起きているくせに、僕が声をかけるまで絶対に目を開けない。 「瑞紀、朝だよ、起きて。」 軽く揺すれば思ったとおり、一度甘えたように胸にすり寄ると、すぐにぱっちり開いた目で下から見上げてくる。 「・・・ふふっ・・・おはよ兄さん。」 「こらっいつも言ってるだろ。同じ顔に兄さんなんて呼ばれたくない。名前で呼べよ。」 「はぁい。と・し・き。」 「よく出来ました。」 そして頭を撫でてやれば嬉しそうに肩を震わせた。 今日から新学期。 長い休みの間に僕達は二度入退院を繰り返した。 生まれつき心臓の悪い僕らはずっとそんな生活を送っている。 中学生になって少しは丈夫になってきたんだけど、やっぱり夏の暑さはこたえる。 夏休みが終わっても、まだ夏は終わらない。 今朝も相変わらずの暑さ。 「今日くらい送っていきましょうか?」 エプロン姿の母さんが心配そうに顔を出した。 「いいよ。大丈夫。」僕たちは久しぶりの制服を着て玄関を出た。 「「いってきまぁす。」」 「いってらっしゃい。気をつけるのよ。」 「「はぁい。」」 エレベーターを降りてマンションの外に出る。 夏の日差しが眩しい。 学校までは歩いて20分くらい。そんなにたいした距離でもないけど、室内環境に甘やかされていた身体にこの暑さはやっぱりきつい。 教室にたどり着いた時には二人ともフラフラになっていた。 「よっ久し振り。・・・大丈夫か?顔色悪いぞ。」 「・・・実(みのる)。おはよ、何とかね。」 「・・・おはよ・・・」 実は小学校からの友達で、いつも俺達は助けてもらってる。 背の低い僕らが背の高い実と話をするとずっと見上げっぱなし。結構辛いんだよね。 「瑞紀・・・保健室に行くぞ。」 「やだよ。せっかく学校来たのに、もったいないよ。僕平気だよ!」 「そんな青い顔して言われたって説得力ねぇよ。ほら行くぞ。」 「あっちょっと!」 実は瑞紀の抵抗をものともせず、問答無用とばかりに手を掴むと、引きずるようにして教室を出た。 僕もあわてて二人を追って教室を出る。
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