59人が本棚に入れています
本棚に追加
「前に何かで読んだが、良くあるらしいぞ」
「そうなんですか」
「ああ、まず飲み会。特に忘年会の場合は多くの事業所内社員が揃うから」
「今もそうですね。忘年会とは違いますが」
「確かにな。で、本会が終われば二次会、三次会に流れる。最近ではそうでもないし、また人にもよるが、上司は立場上、最後の会までいるだろう。で、会がお開きになり、終電がなければタクシーだ」
「そういえば、ウチの場合は毎年帰れなくなって寮に泊まる人がいるらしいですね」
「ぼくも昔、泊まったことがあるよ」
「へえ、吃驚」
「で、タクシーはもちろん乗り合いだ。男の上司と女の部下の自宅が同じ方向なら二人で同じタクシーに乗る」
「そんな偶然が……」
「黙って聞きなさい。他に同乗者があっても途中で降りれば二人きりだ。酒の勢いもあって上司が部下をホテルに誘い込み……」
「まあ、お互いに興味があればそうなるかもしれませんが、安っぽいですね」
「あのね、安っぽい話が安っぽく感じられるのは、それが良く起きることだからなんだよ。この会社じゃないが、ぼくの知ってる範囲でも飲み会不倫はあったな」
「おお、怖い」
「次のシチュエーションが社員旅行だ」
「玖珂さん、続くんですか」
「うん、もちろん。だが社員旅行中には男女の関係にはならないよ。あくまで、その後だ。開放的な場で仕事場とは違う一面を相手に見つけ、恋に落ちる。普段とは違う服の趣味とかもありえるな」
「それ、わたしは逆の話を聞きましたよ。会社で真面目に働く姿を見たので恋に落ちるのだって……。つまり仕事が好きならば、それをしているときが一番輝いて見えるという理屈です。だから職場によっては社内結婚が多くなり」
「月島さんは一々話の腰を折るね」
「済みません」
「まあ、いいけどさ。でもネットを見ると今の若い人たちは趣味優先だから仕事で輝くことなんて少ないだろう」
「わたしには何とも……」
「きみは優秀だからな」
「買い被りですよ」
最初のコメントを投稿しよう!