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行為が終わるとわたしはぐったりと疲れている
いったい何度玖珂さんに逝かされただろう。
すでにアイマスクは外されている。
だからわたしの目には玖珂さんの姿が映る。
わたし同様まだ裸の玖珂さんはラブホテルのベッドに結び付けられたわたしの左右の足のロープを解いている。
まず右足からだ。
「女性はいいな。何回も絶頂を迎えられて」
「男の人はやはり射精のときだけですか」
「そうだな。それが多少長く続くことがあっても、一波、二浪、更に三浪と繋がることはありえない」
「そうですか」
「それに一回の行為で十回も逝けない。少なくとも、ぼくには無理だな。ペニスが毀れてしまう。いや、その前に勃たないか」
わたしの両足の拘束を解くと、次は両腕の紐を解きにかかる。
「少し痕がついちゃったな。ごめん。夜までにはきれいに消えると思うが……」
「そうですか」
「下半身は靴下とジーンズでどうにでもなるが手首はね。だから女物の手袋を買ってきたよ」
「ありがとうございます」
「いや、こちらこそ、ぼくの我侭に付き合ってくれてありがとう」
と言いつつ軽いキス。
途端に、わたしの胸が一杯になる。
玖珂さんを独り占めにしたい気持ちで溢れ返る。
それを、今このときだけ、と自分で感じることを許してしまう。
「きみは可愛いな。歳は一回りしか違わないから娘と言うには大き過ぎるが、そんなふうにも思える。だからときどき可笑しな気分になるよ」
「わたしは玖珂さんをお父さんには思えません」
「まあ、そうだろうな。近くてお兄さんというところか、あるいは親戚の叔父さんか」
「後者の方が近いですね。でも玖珂さんは玖珂さんです」
「それを言うならきみはきみだよ。月島さんだ。でなければ、こんな関係にはならなかった」
「後悔していますか」
「いや、きみの方はどうだ」
「後悔はしていません。今は幸せ過ぎて怖いくらいです」
「それは良かった。さあ少し落ち着いたなら、シャワーを浴びてきなさい」
「はい」
玖珂さんに腕を引かれ、わたしがゆっくりとベッドに起き上がる。
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