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薫と共同生活をしていて不思議とまでいかなくとも気になったのは彼女が下着姿で部屋を歩きまわらないことだ。
わたし自身は気にしないが、それは自分の部屋だからだろう。
薫の場合は他人の部屋という遠慮の表れかもしれない。
そういえば入浴は部屋の風呂を使うが、わたしの前で裸になることを極端に恥ずかしがるのもどういう神経か。
わたしは別に薫の肢体をじっくり鑑賞したいわけではないが、これまで裸体を見たことがない。
平日は、そもそもわたしが会社から帰ってくる前に風呂を終えている。
土日はそうはいかないが、
「絶対覗かないでよ」
とまるで思春期の子供のように頑なだ。
だから、わたしは薫が風呂に入るときにはフローリングに引き篭もる。
寝る前に筋トレとストレッチをする習慣なので、やや早い時間にそれを行うだけだ。
風呂場のボディーソープが切れ、バスタオルを巻いただけの格好で薫がフローリングまでやってきたとき、押入れから出すのを忘れていた買い置きを渡すと、
「ありがとう」
と首肯いた後、
「本当に覗かないでね」
と真顔で念を押す。
わたしが冗談好きな性格だったら薫の入浴中絶対に風呂を覗いただろうが、残念ながらその趣味はない。
単に可笑しな輩と感じただけだ。
話の流れで薫にそのことを問うと、
「ちょっと身体に問題があってね」
と少し困った口調でそう答える。
だから、わたしは薫の言う(精神の)病気に関係するのだろうなと想像する。
結果的にその想像は外れていないが、わたしには思いもよらない内容とわかる。
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