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「月島さん、これまでありがとう。どうやらアパートが借りられたわ」  ある日、会社から帰ると薫が言う。  薫が言っている内容がわからないので、 「ああ、それは良かったね」  と考えなしに相槌を打つと、いつになく真剣な目で薫がわたしの顔を睨む。 「わけを話すときが来たようだわ」 「ご飯を食べながらでもいいかな」 「それは構わないけど、緊張感ゼロね」 「緊張する話なわけ」 「まあ、いいわ。腹が減っては何とやら……。ご飯にしましょう」  それだけ言うと食事の用意を始める。  甲斐甲斐しく食卓を整えつつ、煮魚と味噌汁を暖め直し、茄子/しめじ/豚の炒め物などを丁寧に添える。  後者の炒め物は味付けを薄くしてあるので、好みにより山椒や胡椒または七味をかけていただく。  簡単で美味しい一品だ。 「いただきます」  と二人で言い、わたしがご飯を食べ始め、一通りおかずに手を付ける。  お味噌汁を啜ってから、お椀をテーブルに置くと、 「月島さん、これまで気づいていなかったでしょう」  と薫が水を向ける。 「何を」 「あたしが月島さんを好きだってことを」 「えっ」 「ホラ、気づいていない」 「急にそんなこと言われてもな」 「いいのよ、すぐに玖珂さんから奪う気はないから」  それが第一の衝撃だ。  ついで、 「月島さん、絶対に気づいていないでしょ」 「今度は何を」
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