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 玖珂貢とわたしとの関係は事故だ。  もっとも、すべての恋は事故かもしれない。  彼とわたしは性格的に相性が良く、わたしが彼の仕事ぶりに一目置き、彼がわたしの肢体に多少の興味を持っていたことは事故以前の事実だが、普通はそれだけで終わるだろう。  テレビドラマではあるまいし、一企業に最低一件の不倫があるとは限らない。  もっともそんなことから彼と話し始めたのが、わたしの運命だったのかもしれない。  だが、それも自分に対する言訳にしか聞こえない。  良くあるように飲み会の席だ。  某商品の一千台出荷記念パーティー。  わたしたち二人が勤める会社は精密機器メーカーで一般消費者向けではない商品を製造販売している。   だから数にして高々千台の商品が売れただけでも大ヒットなのだ。  家電とは桁が違う。  さらに価格も違う。  ちなみにわたしの社内での所属は開発部で、先の大ヒット商品担当課とは異なる。 「そんなこともないだろう。社内不倫は多いらしいよ」  玖珂とその話をしたのは二次会だ。  全部で三十名ほどの社員が居酒屋の一角に押し込まれる。  会社の別の社員集団が別の一角にいるのが見える。  開発部と国際部、それに営業部の半分は大抵一緒だが、総務部、経理部などとは一緒にならない。  サービス部は半々といったところか。
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