力の目覚め

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 「私と一緒に日本を、世界を平和へと導いては行こうではありませんか。そのためにどうか私に清き一票を・・・。」  真冬の寒空のなか1人の女性政治家が演説をしている。最近よく、平和だなんだと聞くがあまりよくわからない。どんな政策をしようがどんな法をつくろうが犯罪者やテロリストは止まらない。世界を平和にするというのならそれ相応の力が必要なのだ、そしてそんな力のない俺は世界の平和どころか自分の平和もままならず財布をすられてしまった。  「はぁ、大学を卒業したら適当にサラリーマンでもやってると思っていたけど、富士聖也(ふじせいや)23才いまだバイトでギリギリの生活。世界の平和とかいう前に俺の懐の平和を守ってくれよ。」  ピロロロン♪ピロロロン♪ 「また親からのいびりかな。」 そう呟いてスマホの画面をのぞいてみると「雪村 柚子(ゆきむら ゆず)」とある。    俺と柚子は大学の合コンで出会いSNSで連絡を取り合っていくうち、二人きりでも合うようになり付き合ってもう半年がたつ。でもまだキスもなにも俺はしたことがない。俺が勇気がないのがいけないのだが。 「はい、もしもし柚子?」 「私とわかっているなら1コールででなさい!  で、要件なんだけど明後日のやつ予約してくれた?」 「明後日というと、レストランの予約ですよね?  ・・・・・・・・まだです。」 声を通して柚子の怒りジリジリと伝わってくる。 「なんで?」 「いまからします。すみません。」 「次またこんなことあったアンタの毛という毛をむしるからね。」 脅迫を最後に電話がきれた。 いまので俺の頭皮からもう数十本毛が抜け落ちた。
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