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「あの、えーっと。僕はただ小麦粉運べって言われただけで。だから偽物なんて言われても困るというか。」
「お前ふざけとんのか。ちょい事務所ではそうやないか。」
え、ウソ。コレやばくない。諭吉とかでデートの予約とかもういいから。
「いやそのまえに先崎さんに連絡してからでいいでしょうか。」
半泣きで俺はスマホをとりだして、震えながら先崎さんに電話した。
プルルルル プルルルル ピッ
「あ、もしもし先崎さんですか。あれ小麦粉じゃだめってアフロがいうんですけど・・・・。」
プツン・・・・・・・・・・・・・・。
「電話切れちゃいました・・・・・・・・。」
たった数秒の沈黙が何時間にも俺は思えた。
「事務所いきましょか。」
アフロが俺の背中に腕をまわす。
「ヒっ!」
俺は思わず声が漏れた。
「どうした。ビビってんのか?」
俺その瞬間足に全神経を研ぎ澄ませ、出口だけを見つめウサイン・ボルトに負けないくらいのスタートダッシュを決めた。
「逃げる気かオイッ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後ろから数人の足音と怒鳴り声が背中に迫る。
「どこかに隠れないと。これはマジで殺られる。」
路地のなかを走りまわっている間に俺の膝はバンビのようにかくかくになってきていた。
「くっそー。チラシ通り体力と根性がいるなこれ。」
「オラオラ、どこまで走るんじゃ。しんどいやろ。止まれや。」
アフロが後ろから某プロレスラーぐらいかすれた声で叫んでくる。たぶん、アフロも俺と同じぐらい疲れているんだろう。膝がところ天みたいに震えている。
「あ、くそっ!」
「はっはー。行き止まりだ。もう逃げれねぇぞ。」
やばいやばいやばい。どうするコレ。どっかに「どこでも〇ア」もないかな。
「逃げた罰として一発くらっとけ!!」
アフロが俺の顔面に右ストレートうってくる。反射的に俺はアフロパンチをかわし、高校で習った付け焼刃程度の背負い投げを食らわせる。
「うげっ!」
「おわっ!」
アフロを吹っ飛ばすつもりが俺も一緒にバランスを崩してアフロにのっかかる形で倒れる。その瞬間俺のデコにアフロの鼻のテクニカルヒットする。
ポキンッ!
ラムネが砕けたような音がアフロの鼻から響く。
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