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「はぁ」
と、少女は退屈そうに溜息をつく。目が疲れたので読んでいた本に栞を挟むと、気分転換に窓の外を見やる。一面の銀世界。木々は寒さでかまくらに籠るかの様に、雪を被っている。外はきっと、零下となっている事だろう。
だが、少女は着物一枚。座敷内も暖をとっている様子は全くない。当の少女とて、まるで寒がるような仕草を見せず平然と外を眺めるばかり。
普通の人ならば、例え暖房器具がなくとも布団にくるまるなり、手を擦り合わせて息を吐くなりするものである。にも関わらず、少女の装いは、まるで夏のささやかな涼を楽しもうとでもいわんばかりだ。はっきり言えば、異常である。
ーーその少女からは、一切の〝寒さ〟が欠落しているのであった。
「毎日雪、雪。私からすれば有難い限りだけれど、退屈ね」
ーー面白いことが起きれば良いのに。
そう願った瞬間だった。
ーートントン。
閑静な座敷内に控えめなノックが響いた。まるで、少女の願いが叶ったかのようなタイミングである。
「ごめんください」
少女の耳に野太い男の声が入ってきた。少女は立ち上がり、
「はいはい」
とゆったりとした、どこか勿体振るような調子で答えると、少女はほくそ笑み、玄関へと向かった。
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