終末電話

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携帯電話の機種変更をしたのは、社会人になってからだった。  僕は物持ちが良いほうで、高校生のころから使っていた携帯を大学まで ずっと使っていたのだ。  就職を機にそろそろ携帯を買い換えようと思い、携帯電話のショップに向かったのだ。 そこで、ある機種をいたく気に入ってしまい、購入を申し出ると、もうそのデザインは売り切れだと言われ、がっかりした。僕はどうしても、そのデザインが欲しくて、今後入荷の予定は無いのかと聞いた。 すると、ショップ店員がお客様が気にされないのなら、と返品になったその機種を出してきたのだ。 壊れているとかいうのではなく、あくまでもお客様都合で返品になったとのことだった。 その代わり、割引価格で、と言われ、見た目も使用感がなくまったく綺麗なので僕は二つ返事で購入することにしたのだ。  僕はその日、欲しい機種が手に入ったので喜び勇んで自宅に帰った。 家に着くと同時に、電話が鳴った。見たことも無い番号だ。もしかして、ショップからかな? 僕はそう思い、通話ボタンを押した。 「・・・ぃやっ! ・・めて!お・・願い。許して・・・・。」 女の懇願するような声が聞こえてきた。間違い電話?僕はそう思い、 「もしもし?」 と声に出した。 「や、やめて。いやいやいやぁ~!」 今度は女は叫び声になった。 「ど、どうしたんですか?」 間違い電話の相手は窮地に立たされているらしい。僕はパニックになった。 「やめぅぐぅ。く、くるし・・・んぬう。」 苦しそうに必死で息を吸おうとする様子がうかがわれた。 これは、ヤバい。たぶん事件だ。 「もしもし!何があったんです?大丈夫ですか?」 僕が叫ぶと、電話口は静かになった。 そして、ツーツーツーと音がして切れたのだ。 僕は再ダイヤルした。すると女性の声で 「この電話番号は、現在使われていません。もう一度、番号をお確かめのうえ・・・。」 と乾いたガイダンスが流れた。 う、嘘だろ?確かに今、この電話番号から電話が・・・。 それが全ての恐怖の始まりだった。
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