終末電話

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「おとうさん、おかあさん、ごめ、ごめんな さい。」 風が強い。ことりと何かを置く音がする。 そして、すぅっと息を吸い、吐く音が震えている。 そして次の瞬間、轟音とともに少年のわぁぁぁあと叫ぶ声が数秒続き、ごがんという鈍い音と共に何かが潰れた音がする。あとは静寂が流れ、周りの悲鳴が聞こえる。そこでつーつーつーと音声が途絶えた。 案の定、その電話番号は使われていないと告げられた。 聞いただけでも、少年が自殺をしたのだなという想像がつく。 そういう電話がかかってくるので、僕は自分の登録した番号以外には電話を着拒否したのだ。 そんなある日、友人から着信があった。 「もしもし?」 僕が電話に出ると、ききーっっという車のブレーキの音がし、ドカン、ガチャンという音が連続してあった。 そして、自転車の車輪のような、カラカラと回る音。僕は口の中がからからになった。 友人が事故に遭った!そう思ったのだ。僕は慌てて、リダイヤルした。 そっか、リダイヤルしたところで、本人が怪我したら出れないじゃないか。僕がその思いにいたった瞬間に電話が繋がった。 「もしもし?」 友人の声だ。僕は心底ほっとした。 「お前、大丈夫だったか?今すごい音がしたけど。事故にでもあったのか?」 僕がそう言うと 「はぁ?何言ってんの?」 と返事が返ってきた。 「だって、さっきお前から電話があって、取ったらすごい音がしたから。車にでも自転車でぶつかったのかと。」 「かけてねーし。俺、ずっと家でゲームしてたから。お前、寝ぼけてんじゃね?」 そう友人に笑われた。 僕には思い当たる節があった。 まさか、友人の番号でまでかけてくるようになるとは。 これは明らかに、この電話がおかしい。 呪われている? 僕は絶望した。 せっかく機種変したばっかりなのに。 僕はその電話を手放す決心をしたのだ。
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