第1章

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『滑稽で恥ずかしい。こんな仰々しい写真を撮るなんて』 男「我慢してくれ。壮麗の美少女が物憂げに冬の窓を眺めている。僕はそういった君が撮りたいんだ。ああ、雪でも降ってくれると臨場感がでるのに。」 『でも、心の底ではわかっているはずなのに、偽物のおままごとなんて虚しいだけだって。だって本当は、』 男「君を撮る時に最も大切なことは何だと思う?君が飲めもしないお茶を置いたり、読み終わらない本を持たせたりすることかい?違うね。一番大切なのは僕が君が本物だって思う心の底からの確信さ。限りなく人間に近づけたいというささやかな思いでは、現実に打ち勝つことは出来ない。一点の曇りもない君への思い込みこそが、プラスチック製品を少女としてこの世に降臨させられる唯一の方法なんだ。わかったら話しかけないでおくれ」 男が呟いた時に、雪が降り出したは偶然だったのだろうか。 呵責はもう話しかけてこなかった。
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