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「相変わらず可愛いげのねぇ女だな。もうちょいどーにかならんのかね」 少し拗ねたような声に、鈴を転がすような気持ちで。 「ふふっ、どうにもならない。そんな可愛いげのない女に毎日電話をありがとねー」 なのに、それを隠してしまう。 「お前はほんと、人のことおちょくってばっかりな」 少しだけ機嫌が悪くなったみたいな声。 「わざわざこんな時間だっつーのに仕事から帰ってすぐ、やることもやらんでいそいそと電話なんかしちゃいますけど。文句あるかって」 溜め息と一緒に吐き出すみたいな台詞に甘やかされる私は、そのやわらかさに包まれて、素直になれずに行き場を失う想いで、きゅうと締め付けられる。 「ふふっ、お仕事おつかれさまでした」 「いや、ちょっとお前、そこは違うだろうがよ」 あー、もぅっ。と呟く声を電話越しに聞いて、今、言えばいいのにって、思うほど唇はぴたりとくっついて。 無言のまま窓の外を見上げた空に、まるい月を見つけた。
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