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「月、きれいだね」
まあるく、欠けたところなどない月の夜。
「つきぃー?ばか野郎お前、こっちは月どころか雨だっつーの」
「そうなんだ。そっちは雨なんだね」
間違いなく、おなじ月が空にあるはずなのに。
「あぁ。ったく、遠いよなぁ」
「遠いね」
不器用で、臆病で、曖昧なまま。
水のなか、しっかりと根を出したポトスの鮮やかな緑を見つめる。
もう土に植えてあげても大丈夫なのだけれど。
水から引き抜いたそれは枯れずに、うまく土の中へ根を伸ばすだろうか。
土に根をうずめた瞬間に、水の在りかを見失ったりしないだろうか。
「いつこっちに帰ってくるの」
「んー。わかんね。帰れるのかも謎だよ」
遠くて触れられないから、求めすぎたら、枯れてしまいそうで。
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