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そこから現れたのは、黒髪、黒い瞳の日本人の顔だった。
さっきヘルメット越しに一瞬だけ見た顔は北欧人のように見えたのに、色白で鼻筋が通った面長な顔をしているが、日本人の顔。
月子が呆然と見ていると、男は足を少し引きずりながら、その場に立ち上がった。
背が高い。
草原にぽつんと立つ、一本杉みたい。
手と足がとても長く、モデルみたいな体型だ。
その長い腕を伸ばして、
「君に怪我はない?」
腕を伸ばして、座っている月子に手を貸そうとしてくれた。
でも、伸ばされた男のライダージャケットの袖口から、ツゥーッと赤い血が流れ落ちてきた。
それがぽたりと地面に落ち、
「やっぱり、怪我してますよっ!」
月子は叫ぶ。
男はようやく自分の怪我に気がついたように、血の流れてきた自分の手首を見て、それから勢いよく、着ていたライダージャケットを脱ぐ。
黒いファーのついた茶色いライダージャケットの下から現れたのは、薄手のインナー一枚。
なのに男の体からは、ほわほわと湯気さえあがっているように見える。
体が鍛えられているからだろうか。
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