プロローグ(新月)

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「あれは君の?」 男が視線を動かして言った先には、A4のコピー用紙がひらひらと飛んでいる。 「あー! 私の卒業論文」 月子は慌てて追いかけた。 12月のいきなりの突風に煽られて、正味20枚のレポートが飛ばされてしまったのだ。 近所のコンビニまでコピーを取りに出て、近くだからと封筒にも入れず裸で持っていたのが悪かった。 とっさに拾おうと、道路に飛び出し。 月子は、小学生の飛び出し人形みたいなマネをしてしまったわけだ。 あちらこちらに散らばったコピー用紙を拾い集めてる間に、男は倒れていたバイクを起こした。 しゃがんでバイクの傷の様子を見てから、長い足をあげてシートにまたがると、エンジンのセルモーターを回してみる。 グオン 音がして、何事も無かったかのようにエンジンがかかった。
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