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「あ、す、すみません!」
後ろに、いつの間にかお婆さんが立っていた。
ぶつかりそうになり、慌ててよける。
上品そうな和装のお婆さんは、着物の袖を口元に当てて「ほほほ」と小さく笑った。
「まあまあ、ごめんなさいねえ。まさか、そんなに驚かせてしまうなんて。」
「いえ、こちらこそ気がつかなくて。申し訳ありませんでした。」
俺が頭を下げていると、式が始まるので列席する人は中に入るよう巫女さん姿の女性が呼びに来た。
「あら、あなた、お式に出るの?」
「はい。昔の後輩の式に呼ばれて。それじゃあ、失礼します。」
俺は、もう一度頭を下げて拝殿の中に入った。
背後の視線に、俺はそのときちっとも気づいていなかった。
続く
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