第1章

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御手水で手と口を清める。 12月の水は冷たい。 鳥居の前で一度頭を下げてから踏み出した一子さんは、おや、と首を傾げた。 自分の前を歩いていく男。 おそらく、式の参列者だろう。 服装を見れば分かる。 自分の娘よりは若く、かといって孫よりはずっと年上に見える。 何が、という訳ではない。 その男に何かが憑いているわけでもない。 だが、気になるのだ。 何かある。 もしや、自分が今日ここに来たのは、あの男が関係しているのではないだろうか。 一子さんは、そっと男の後ろを歩いた。 その男は、随分と背が高かった。 おそらく、娘の夫よりも、孫の晴樹よりも高いだろう。 男は、拝殿の前で賽銭を入れ、手を打った。
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