第1章

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一子さんが無言で後ろに立っても気づかない。 頭を下げていた男は、一歩後ろに下がって振り向き、一子さんが立っていたのに随分驚いた様子だった。 申し訳ないと、しきりに頭を下げる。 聞けば、後輩だかだれかの式に来たのだとか。 誠実そうで、人の良さそうな態度だったので、一子さんは好感をもった。 だが、それよりも・・・ 式が始まるというので、男は一子さんにもう一度頭を下げて拝殿の中に入っていった。 その場に残った一子さんの口元に、笑みが広がる。 「面白いわ・・・!長生きしてみるものね!あんなもの、初めてですよ!」 ご機嫌な一子さんは、社務所に引き返した。 式と披露宴が終わるまで、いさせてもらおうと思った。 もう一度、あの男と会って話してみたいと思ったのだ。 続く
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