第1章

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だから、俺が辞めて悲しんでくれたのは先輩だけっすと言われ、俺は返す言葉が見つからなかった。 どうして気づいてやれなかった、俺。 きっと、俺に気を使わせないために、辛いことも嫌な思いも全部隠していたんだ。 営業成績だの開店資金を貯めるだの、そんなことばかり気にしていた当時の俺をぶん殴りたい。 今は実家の農家を継いだんですという後輩は、何も気にしていない風だったが。 披露宴が始まってからも、俺は気が重かった。 俺は、ここに招かれてよかったんだろうか。 何も庇ってやれなかった。 相談にも乗ってやらなかった。 何を見ていたんだ、俺は。 披露宴が終わると、早々に俺は会場を出た。 合わせる顔がない。
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