第1章

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県庁勤めの苛烈な娘が、東京に出張した折りに、妙な店に入ったと報告しに来たことがあった。 土産を持って実家に来た娘が、語った内容は、それはもう面白いものだった。 店にいる客が、ことごとく人間ではないというのだ。 しかも、店の前の止まり木に、脚が三本あるカラスまでいたという。 「娘。何度も言いますが、それは神様のお使いのヤタガラスですよ。」 「そんなものいません。あれは、奇形のカラスです。」 強情な娘である。 しかし、さすがに店内の客については、人間ではないと感じたらしい。 そこは、この母親にしてこの娘だ。 現実主義者であっても、そこは自分の目で確認したのだ、事実として受け入れたのだろう。 それにしては、ヤタガラスのことはただのカラスだと言い放っているが。 そのヤタガラスの力が弱いのか、中の客の方が人ならざるものの気配が強くてそちらに気がいっていたのか。
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