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高台にある公園からは、夜だと工場地帯と隣の市の街の明かりがすごく奇麗に見える。
絶好の夜景ビュースポットだ。
うん、ビュースポットだ。デートスポットとか思うな。
なんかカップルはいるけど、他人は他人、オレはオレ。
おいおい、高遠、なぜ夜景がキレイに見えるベンチへオレを誘導する。
この公園を通り抜けて帰るんじゃないのか。
「明日、この公園で待ち合わせしようか?」
ああ、そういう話をするためにここに連れて来たのか。
なるほど?
店でしても良かった気もするけど?
いや、オレも話途中で、待ち合わせ場所決めるのを忘れてたから、コイツも同じだったのかもしれない。
オレの家と高遠の家の中間地点として考えると、もっと先の方がいいけど。
一緒にサンドイッチ喰うんだもんな。
この公園で待ち合わせた方がいいかもしれない。
……ちょっと……また、腰に手を回されてるんだけど……えーっと、風よけ?
風よけになってくれてはいるけど、コイツもやっぱり寒いんだろう。
だからこんな……こんなぎゅーーって。
ぎゅーっってっっっ!
「寒くないか?」
ほら、やっぱコイツも寒かったんだ。
「あー、まあ、ちょっと。寒い」
「けど、ほっぺたは真っ赤だ。すげぇ温かい」
ぴとっと頬に手を当ててきた。
「バカ、やめろよ、お前の手が冷たい」
「温っためてよ。河南、『ハー』ってして?」
「ヤダよ、恥ずかしい」
「……恥ずかしい?」
何だよその甘ったるい言い方。
恥ずかしいって言ったことが恥ずかしくなるだろ!
ちょん、ちょん。
軽く握った拳で、高遠がオレの唇を優しくノックする。
「河南、『ハー』ってして?」
うう……。やらなきゃ、ずっとこんな……ちょんちょんとか……される?
ハー。
一応息を吹きかけたけど、なんか逆に冷たくなったかも?
両手で高遠の手をくるむようにして、もう一度『ハー』と、息を吹きかける。
う……眼鏡が曇った。
けど、これなら……。
「ありがと、河南、温かいよ」
おう、良かった。
パッと見上げると、フッと笑った高遠がオレの肩を抱いた。
「眼鏡、曇ってる」
「しょうがないだろ」
「可愛い」
「可愛いわけない」
眼鏡が曇って可愛いってなんだ。この程度ならすぐ曇りもはれるし。
「河南、やっぱりバカだな。今、眼鏡が曇ったのが可愛いって言ったと思ったんだろ」
ぬぐっ。
さっきまでめちゃ優しかったのに、出たよ上から目線。
思わずプウッとむくれてしまう。
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