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河南が可愛い。
雑貨屋で河南の肩に手を置いて、ちょっと高いところに置いてあったレザー小物を取っただけなのに、なんだかトロンとした顔をしている。
オレと密着したのがそんなに嬉しかったのか?
まあ、間違いないよな。
わざと顔を寄せて話しかければ、落ち着かない様子でキョドキョドし始めた。
ピュアで可愛い。
香やアロマなどのコーナーに移動すると、河南がやたらとクンクン嗅ぎ比べをしたがる。
犬みたいで可愛い。
けど、すぐ鼻がバカになったらしく、変な風に顔をしかめていた。
背後から手を回し、鼻休めのために置いてあるコーヒーの香りの入ったボトルを嗅がせてやる。
急に手が伸びてきたのに驚いたのか、後ろに一歩下がった河南の背中が俺の胸にぶつかった。
……。
自分から胸に飛び込んでくるなんて積極的だな。
物が多く狭い店内では人の目が届かないから、イチャつきたくなったのか?
俺は一向にかまわないぞ。
河南の腰に腕を回してコーヒーのボトルを嗅がせていると、
「もういいからっっ!」
と、手を軽くパシパシと叩かれた。
ネコパンチ。可愛い。
「アロマ、好きなのか?」
「いや、別にっっ?」
好きでもないわりには、随分熱心に嗅いでいたようだが。
「高遠は、なんかつけてるのか?」
「ああ、貰い物のフェラガモだ。ユニセックスな香りで結構気に入ってる」
「フェラ……?」
……そこで止めるな。
フェラガモを知らないのか。
やっぱりバカは可愛い。
「フェラ……なんとかって、どこで売って……あ、貰い物って言ってたか」
フェラ『ガモ』より『なんとか』のほうが長いぞ。
「結構どこでも置いてるけど、今つけてるのは雑貨屋では取り扱ってない。なんだ、香水が欲しいのか?」
「えっ?いや、別に。オレが香水とかありえないだろ」
「ま、そうだな」
素直に相づちをうったら、ちょっと不本意そうな顔をされてしまった。
なんだ、やっぱり欲しいんじゃないか。
でも確かに河南は香水ってガラじゃない。
少し記憶を辿る。
……あそこならいいか。
別のショップに移動しようと河南の手を握った。
歩き始めると、河南に手をグイグイ引かれる。
俺と手をつないで歩くのがそんなに嬉しいのか?
はしゃぐ河南、可愛い。
連れてきたのは、さっきのごちゃごちゃした店と違い、明るく女性の多い雑貨の専門ショップだ。
ソープや入浴剤などが数多く揃っていて、その並びに練り香が置いてあった。
俺が手を伸ばしたのは爽やかなグレープフルーツ系の練香だ。
河南にはブランド香水より、こういったものの方が似合うに違いない。
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